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映画@見取り八段

自己満足映画批評ブログです。邦画・洋画などジャンル問わず観賞。劇場上映中作品のネタバレ感想は別枠で表記。ランキングは年末総評価まとめで。

『合葬』君辱めらるれば臣死す

合葬 ~GASSOH~

   

 
監督: 小林達夫
キャスト: 柳楽優弥、瀬戸康史、岡山天音、門脇麦、桜井美南、井之脇海、高山侑子、藤原令子、隆大介、飴屋法水、峯村リエ、小市慢太郎、りりィ、オダギリジョー、カヒミ・カリィ

公開: 2015年9月26日 観賞: 2016年3月26日 DVD観賞



そりゃあ、あの声を聞いてしまったら君のために立ち上がらなくてはならないだろうよ。

聞いた者と聞かない者。見た者と見なかった者。
彼らは一体何をしたかったのだろう。

カヒミ・カリィのナレーションが軽く、違和感。その違和感に慣れた頃に気づくのだ。

ああ、これ、怪談だよね。

◆あらすじ
慶応4年、260年以上にわたって続いた徳川幕府が終えんを迎えた。江戸幕府第15代征夷大将軍・徳川慶喜に仕えていた秋津極(柳楽優弥)は、何の前触れもなく婚約を破談にしたことで婚約者の兄である福原悌二郎(岡山天音)から激しい怒りを買う。秋津に破談の真意を問いただそうとする福原は、ひょんなことから幼なじみの吉森柾之助(瀬戸康史)と再会する。秋津、福原、吉森が顔をそろえる中、吉森が養子先を追い出されて行くあてのない身だと知った秋津は、自分の所属する幕府解体反対組織・彰義隊への入隊を持ち掛ける。(シネマトゥデイより引用)

 


上野戦争は1864年に現在の東京・上野を戦場として起こった幕末から明治にかけて展開された戊辰戦争の流れの1つである。

京を戦場とした「鳥羽・伏見の戦い」を経て、15代将軍・徳川慶喜は江戸へ退去。朝廷への恭順を示すため謹慎を決意し江戸城を出る。

慶喜が上野・寛永寺で謹慎したため、上様警護の目的で彰義隊は結成された。もちろん、真底に流れる志は対新政府であり、憎き「薩賊」討滅である。

武士の長にいる将軍を辱めた賊軍は許せぬ…という者が集まり、組織はどんどん膨らんだ。

膨らみ過ぎた組織には必ず派閥ができるもの。ただただ上様をお守りしたかった者。幕府の威信をまだ取り戻せると信じた者。武士として死に場所を求めた者。

そして、何だか解らないけれども、ただ居た者。


そもそも、幕末におけるこの戊辰戦争は北上するほど不気味な様相を帯びていた…と思うのだ。

鳥羽伏見の段ではもちろん幕府軍は自分たちが朝廷の…帝の敵だなどと思ってもいない。むしろ薩摩・長州こそが日本を騒がせる逆賊だと思っていた。だから士気は高い。

なのに、戦っている内にいつの間にか幕府軍こそが賊軍になっていた。

犯罪者の汚名、長たる将軍の不在、死んでいく仲間たち。…なのに。何所からともなく同士が湧いてくる。彼らは一体何だったのか。

最期にはもう武士である誇りとやらと死に場所と、赤い血だるまのような執念だけが彼らを突き動かしている。亡霊たちが北へ北へと向かって行く図。

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あの時代自体がすでにホラーと同じ。

この映画を観終えた時、漱石の『夢十夜』を読み終えた時のような感覚に陥った。

気持ち悪かった。恐かった。

不気味だ、と思いながら、それでも何度も泣いた。熱に浮かされたのか憑りつかれたのか。彼らは一体何をしたかったのだろう。

止められない集団心理の恐ろしさ。行き場のない青春の焦燥感。方向の違う正義感。若さゆえの選択。

幕末の妙な熱っぽさと不気味さと、生きる事自体に試行錯誤する若者たちの痛々しさに涙した。

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歴史ものとしての彰義隊ドラマをガッツリ見たい方にはお薦めしない。

妙なナレーションと劇伴、戦闘描写のない戦争、違和感。

上質な怪談だよ。

エキセントリックで美しい。

 

ここから下ネタバレ観てない方は観てから読んでね 


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木の幹を枕にして寝る男。気持ちよくて離れられなくなる…悌二郎。
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君が辱めを受けるくらいなら…いただいた刀で臣は死する…極。

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何のためにそこに居たのか最後まで解らず。茶碗の中の戦争を覗いているだけだった柾之助。


全部話通り。

あんなに馬鹿にしていた森の笛の音に誘われて…

女の元にフラフラと行きながら極は隊を抜ける事は無かった。

君 辱めらるれば 臣 死す 君 辱めらるれば 臣 死す

お見送りした者にしか解らない共感覚。彼らだけが上様の呪いの言葉を聞いたのだ。

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波及した呪いは女をも殺す。

この女はきっと、このニコニコした夫にこの後血まみれにされるのだろうなと…
そんな風に思うくらい門脇麦さんの表情が不気味で綺麗だ。 

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『合葬』公式サイト

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