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映画@見取り八段

自己満足映画批評ブログです。邦画・洋画などジャンル問わず観賞。劇場上映中作品のネタバレ感想は別枠で表記。ランキングは年末総評価まとめで。

『カルテル・ランド』メキシコ麻薬戦争の澱

カルテル・ランド

~ CARTEL LAND ~ 

  f:id:nakakuko:20160503044428p:plain

 
監督: マシュー・ハイネマン
上映館:  シアター・イメージフォーラム他 

公開: 2016年5月7日  観賞: 2016年5月2日(試写会)


どんなにそれが悪いことだと解っていても、抵抗したら家族もろとも首を切られて街中に曝されるのだとしたら…そんな戦争に参加できる

国ごと犯罪に取り込まれている。力のない者が上に立つことは罪だ。

◆あらすじ
メキシコ中西部ミチョアカン州では麻薬カルテル“テンプル騎士団”の抗争が激化し、市民を巻き添えにした犯罪や殺し合いが続いていた。堕落した政府や警察が頼りにならず、内科医ドクター・ホセ・ミレレスは市民たちと自警団を組織する。彼の勇気ある行動に同調した人々が各地で武装蜂起し、ギャングたちを追い込んでいくが……。(シネマトゥデイより引用)

 


第88回アカデミー長編ドキュメンタリー賞ノミネート作品。

メキシコにおける麻薬カルテルと自警団の戦争を描いたドキュメント。
ドキュメンタリーなのでネタバレも何もないわけで、実際に起きている事象については書いてしまうのでご了承ください。

本当に実際の映像なんだろうかどうやって撮ってるのと思うような衝撃映像が連発。

カルテル戦争に関する話はニュースなどで解っているつもりではいたが、実際に目にする残虐映像の数々には目を覆う。

どうしてそんな部分から切断するのだろう…というような部分から切られた遺体の映像も出てくる。そこは見る前から覚悟が必要かと。


メキシコ麻薬戦争の根は深く、2000年代の初めの方から現在に至るまで麻薬組織同士の争いに巻き込まれて殺害される人は後を絶たない。

作品内でも描かれるが、その「殺害」方法や遺体の処理は容赦ない。メキシコの独特な宗教観がそこに関わっているのかどうかはよく解らない。

政治は軍は警察は何やってるんだという話になり、当然「自警団」という物が立ち上がる。

どんな世界にだって自分たちで何とかしなければ、という正義感の持ち主はいるわけである。この作品は、その自警団を描いた話。


幕末の日本と似ている感覚もあるかも知れない。と、ちょっと思った。

法が充分機能せず、自分たちが守るのだと立ち上がってみたものの組織が大きくなっていくと統制が取れず…

気が付いたら舵の方向が違っていた。

組織の理想を維持すること、そして権力に抗うことの難しさよ…。

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権力はいとも容易く正義を取り込む。では、どうするか。

力を力で制そうとする限り何も変わらないと思うの。

この試写会のトークゲストに『ゆきゆきて、神軍』の原一男監督がいらしていて、このメキシコカルテルの現状を水俣病やアスベスト裁判に被せ、政府ぐるみで真実を隠蔽する恐さや武器を持ってでももっと戦うべきというような話をされていたのだが、うん、ちょっと違うかなという気もしたのだった。ごめんなさい。汗.gif

だって、メキシコではちゃんと戦おうとしている政治家やジャーナリストたちも一定数で出てきているのである。

そして、どうなったか。みんな惨殺された。
(ここにはリンクしませんが、気持ち悪い話がまとめられたサイトがたくさんあるので検索すればいくらでもガックリすることができると思う)

強大な力で圧倒されたら、いずれはみな恐怖で屈服せざるを得なくなる。
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この状態は日本でいうなら浅間山荘事件やオウム事件の内部にいた人たちに近い。それが国そのものの状態だという事。

さあ、これをどうしろと言うのか。

法の秩序は何処へ行ったのか。
現在進行形で病んだ社会を抱える国の実態を見せつけられた。

この国で作られた物の一番のお客さんらしいアノ国が、買うのをやめた上で軍事を持って介入すればいい。…と思うのだが、必要悪として見逃しているんでしょう。

つまり、腐っているのは世界そのものだね。

時折、差し挟まれる腐った世界に不似合いな美しい空、白茶色けてサラっとした土、建物。

美しい国だからこそ、そこに怯える人たちの恐怖が生きる。

 

ここから下ネタバレ観てない方は観てから読んでね 


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現在進行形で起きている事のドキュメントだから解決はなく、モヤっとしたものが残るのは当然。

だが、個人的に国の行く末よりもモヤっとしたのが英雄のはずのホセ・ミレレスである。

正義の人であり、強い精神力の持ち主であり、医師であり、みなに慕われる。障害が残るほどの事故を起こされてもその心は折れず、なのに、カルテルと国策の陰謀により次第に力を失って行く。

憐れなヒーロー……

の、はずなのに、終盤になってこのヒーローに突然被せられる「女好きで愛人いっぱい」なキャラ。

あれでドン引く人もいると思うのね…。

ドキュメントと言っても全て描く必要はなく、別にヒーローはヒーローでいさせてあげてもいいんじゃない

…と思いつつ、これが『ハート・ロッカー』のキャスリン・ビグロー製作総指揮というところに、ちょっとニヤっとする。

家族も巻き添えになるような大仕事をやっているというのに愛人までいっぱい作る…奥さんから見れば、たぶんエロ親父なんだよね。

完璧な英雄などおらず、みんなが何処か毒されている。

力を持つというのは、そんなことなのかも知れない。


『カルテル・ランド』公式サイト

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