『バンクーバーの朝日』日本の誇り

バンクーバーの朝日

   バンクーバーの朝日.png

監督: 石井裕也   
キャスト: 妻夫木聡、亀梨和也、勝地涼、上地雄輔、池松壮亮、高畑充希、宮崎あおい、貫地谷しほり、ユースケ・サンタマリア、本上まなみ、田口トモロヲ、徳井優、大鷹明良、岩松了、大杉漣、鶴見辰吾、光石研、石田えり、佐藤浩市

公開: 2014年12月20日

2014年12月22日。劇場観賞

劇場予告でウルウルして、ずいぶん前から楽しみにしていた。
けれども、予告ほど泣けることは無く終わってしまったわね…。題材は面白いのに何だか薄い…。
「歴史」と「スポーツ」を描くという難しさ……。

あらすじ
1900年代初めのカナダ・バンクーバー。貧しい日本から新天地を目指してカナダにやって来た日本人たちは、想像を絶する激しい肉体労働や貧しさに加え、差別にも苦しんでいた。
製材所で働くレジー笠原(妻夫木聡)やケイ北本(勝地涼)、漁業に携わるロイ永西(亀梨和也)らは野球チーム「バンクーバー朝日」に所属し、最初は白人チームにばかにされながらも、次第に現地の人々にも認められていく。(シネマトゥデイより)

第二次世界大戦前のカナダ移民や戦時中の強制収容所についてはある程度知っていたが、野球にあまり興味がない事もあってか「バンクーバー朝日」については知らなかった。

開国後、日本人は国策によってハワイやブラジル、ペルーなどへ移民として出国した。カナダも同じく。日本での人口増加による失業や土地の不足により、彼らは新天地へ旅立って行ったのである。

カナダへ行けば一生遊んで暮らせるほど金が稼げる…という噂に乗ったのは劇中でも語られた通り。そして、実際の扱いも劇中で語られた通り…。

安い賃金でも黙々と働く日本人は雇い主にとっては重宝されたがカナダ人からは白い目で見られることになる。元々、白人社会だ。黄色いジャップ(禁止用語ですがここでは歴史を伝えるために使われています…とは最後にテロップで出てくる )は次第に差別の対象となり、日系二世の時代にはそれはますます顕著になった。

そんな中で身体も小さい日本人がスポーツで白人に勝利する。考えただけでもワクワクするストーリー。

…のはずだったんだけどなぁ…。

俳優陣は鬱々とした時代背景を丁寧に演じ、それぞれの生活に苦しみながらも野球に打ち込む姿は清々しかったのだが、その背景が「歴史をダイジェストに語ってみました」的になってしまっている。

差別の描写は想定内。理不尽さも想定内。

それだけではなく、肝心の野球描写がどうにも盛り上がらない。盛り上がったのはレジーが「あれ」を思いつき採用してからのほんの僅かな間。

ちょっといい感じになったかな…と思ったらもう落日が近付き終了しちゃいましたよって…結果、辞書が一冊完成するほどの感動も得られず終わった。

面白くなりそうな要素が満載の題材だっただけに、うーーん、どうしてこうなったのだろうという疑問でモヤモヤしてしまうのだった。

一番ウルッとしたのはストーリー本編終了後に歴史を語るテロップを読んだ時…って、なんだそりゃって話だけどホントなの。

歴史ものもスポーツものも一筋縄ではいかない題材なんだな…と実感。

 


以下ネタバレ感想

 

出稼ぎの金は見栄のために全部日本に送ってしまう父親を持つレジー。母も妹も父に反感バリバリだがレジー本人はそうでもない。

言いたい事は飲みこんでハッキリ言わず、カナダ人には逆らわず、上手くやっていく…そのキャラはいかにも日本人らしく、実際に日系の方々はそうやってここを乗り越えて来たらしいからいいんだけど…抑揚がない。(演技や役者さんのことではないです)

このリーダーが段々とリーダーらしくなっていく物語なのだと思われるのだが、それをあまり実感できなかった。

まぁ…だからこそ、バントと盗塁で点を稼いでいく野球を生み出す事ができたのだろうし、そこで次第に勝ち上がって盛り上がる様子はちょっと楽しかった。素振りじゃなくてバント練習、笑った。

その盛り上がりをね、もっと長く見せてもらいたかったなぁと。
野球描写も歴史描写も絵力が足らない。

「過酷な労働」もいつも何人かで材木下ろしたり積んだりの繰り返し描写ばかりで、あれ一体何をやっていたのかサッパリ解らない。

最終的にはカナダ人からも人気投票一位になり2003年にカナダ野球殿堂入りを果たしたというほどのチームなのに、この描かれ方じゃ気の毒だなぁ。

133分もの上映時間があるのにテロップで語られる「その後」の多い事……それを本編でやりましょう。

『スリーピング・タイガース』という朝日軍を描いたドキュメンタリー映画があるらしいので、そっちも見てみたい。

ジャパンタウンもバンクーバー朝日軍も第二次世界大戦と共に消えてしまった…。
題材についてもっと知りたいと思わせてくれた事には、ありがとう。

・「バンクーバーの朝日」公式サイト

  

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