映画@見取り八段

自己満足映画批評ブログです。邦画・洋画などジャンル問わず観賞。劇場上映中作品のネタバレ感想は別枠で表記。ランキングは年末総評価まとめで。

『汚れた心』敵は我らの中にある

汚れた心~ DIRTY HEARTS ~

  

監督: ヴィンセンテ・アモリン   
出演: 伊原剛志、常盤貴子、余貴美子、菅田俊、大島葉子、セリーヌ・フクモト、エドゥアルド・モスコヴィス、奥田瑛二
公開: 2012年7月21日



2013年1月18日。DVD観賞。

馴染のある日本人俳優さんが顔を揃えているし言語はほとんど日本語だが、ブラジル映画である。

第二次世界大戦後、ブラジル日系人は敗戦を信じられず、勝ちを主張した「勝ち組」と敗戦を受け入れた「負け組」の間に争いが起きた。
この映画は、その「勝ち組」による「負け組」粛清を描いた黒い歴史の物語。
(「日系ブラジル人・勝ち組と負け組の抗争」by wikipedia)


情報から閉鎖された世界では、人は人の言う事を信じるしかない。そこでは、リーダーの在り方が重要になってくる。「組織」ではリーダーの言う事が全てだから。

正しい方向に導いてくれるリーダーがいれば問題はないが、自分の思い込みや願望を周りにも浸食させて不安感を煽り、あげくの果てにはテロ組織のリーダーになってしまう者もいる。

小さな町で同じ言葉を話す者同士仲良く暮らしていた人たちが、集会を禁じられニセ情報を流され、正しい事を言う事ではじき出されて行く…。その様は、本当に恐ろしい。

この中に飛び込んで行って真実を教えてあげたい、と思うけれども、たぶん教えてあげても彼らは受け入れないんだろうな…。とにかく、日本は負けたと口に出す事で「心が汚れている」「国賊」だと言われるのだから。

敗戦を決して信じず、頑なに日本の勝利を叫び続ける元陸軍大佐・ワタナベを演じる奥田瑛二さんが本当に憎らしい。ふてぶてしい憎らしさを貫き続ける演技が凄い。

信じたいけれども半信半疑。しかし、命令通りに行動してしまうタカハシを演じた伊原剛志さんも素晴らしい。

そして、勝とうが負けようがどうでも良かった。ただ夫の側に居て近所と仲良くしていられれば幸せだったはずの妻・ミユキを演じた常盤貴子さん。
常盤さんには、美しい母や美しい妻の役がよく似合う。

日本の戦争は1945年8月15日に終わった。
しかし、終わっていない所もあった。

彼らは戦争を終わらせることが出来なかったのである。

戦争の爪痕はいつまでも残る。彼らが起こしてしまった事件はあまりにも悲しい。
真実を知らずに何かを叫ぶ事は恐ろしい。


私はこの映画を観ながら、つい15年くらい前に数々の事件を起こした某宗教団体の事を考えていた。

正しい情報を封鎖し、誤った情報で洗脳して狂っていく団体が現れるのは戦時中だけではない。

「汚れた心」を生み出す物はいつの時代にも存在できる。
そして、その中で正しい発言をすることは、とても勇気のいることなのだ。


日本以外の地で、日系人といわれる人たちが終戦後どうしていたのかという興味が持てる作品だと思う。どこかのドラマのような甘い描かれ方はしていない。
ひたすら心が痛い、暗い重い映画だ。

 

ここから下ネタバレ観てない方は観てから読んでね 


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昨日まで仲良く過ごしていた近所の家の壁に書かれた「国賊」の二文字に、ただ悲しい思いをするミユキ。

彼女にとっては、国よりも何よりも夫が全てだ。
夫の事だけが心配で、夫のやる事は応援したかっただろう。本当は。

しかし、夫が人の命を奪うとは思っていなかった。
血に染まって倒れるアオキを見てしまった時の恐怖と怒りと悲しみ…。

これは正義だ。
日本の勝利を信じない人間は心の汚れた畜生だ。


と、ワタナベは言う。

汚れているから粛清するべきだと言うワタナベに逆らう術がタカハシには無かった。

情報操作の事実を知った後、怒りにまかせてワタナベを殺すタカハシが切ない。

友も失った。妻も失った。

汚れていたのは、自分の心だった。

ようやく敗戦を受け入れた後、残るものは孤独と後悔だけだった。

間違った「大和魂」の代償は、あまりに大きい。


「汚れた心」公式サイト

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