『八日目の蝉』愛情と自分探しの旅

八日目の蝉

監督: 成島出   
出演: 井上真央、永作博美、小池栄子、森口瑤子、田中哲司、田中泯、渡邉このみ、吉本菜穂子、市川実和子、余貴美子、平田満、風吹ジュン、劇団ひとり、相築あきこ、別府あゆみ、安藤玉恵、安澤千草、ぼくもとさきこ、畠山彩奈、宮田早苗、徳井優、吉田羊、瀬木一将、広澤草

公開: 2011年5月

      

原作は角田光代氏の同名小説。未読です。

しかし、2010年NHKで放送されていた連続ドラマにどっぷりハマっていた口。
ドラマは名作だった。名作過ぎた。
私は、今でもあの音楽を聞いただけで泣けてくるほどである。

映画を見た感想は、私としては
「ドラマの短縮版」
という印象。
感動の大きさも「ドラマの短縮版」

だから、あのドラマで感動したという方は、映画は見なくてもいいかも知れない。

元々、ドラマと映画を比べるのはおかしな話である。
だって、ドラマ版は全6話。

5話分くらいは、たっぷり希和子と薫の恋人同士のような親子の蜜月ぶりを見る事が出来るのだ。

その愛情の深さが染み入るように見ている者に伝わるから、これが誘拐犯の所業だと知っていても

どうか、1日でも多く一緒に居られますように。
どうか引き離される日が来ませんように。

と祈りながら(もう、それこそ半泣き状態で)見続ける事が出来るのである。

映画では2時間足らずでその描写をしなければならないのだから大変だ。

ドラマと映画の大きな違いは、千草の存在感である。

ドラマ版では、恵理菜の案内役であり、記者に過ぎなかった千草が映画版では恵理菜と同じようにトラウマを抱えた1人の女性として生きている。

千草を演じた小池栄子がまた、素晴らしい。
ここは、ぜひ見ていただきたいところ。

もう一つ、大きな違いは写真館。
田中泯さん演じる写真館の店主が、短いシーンなのに
すごい存在感。

あと、実母である恵津子は、ドラマ版よりも遙かに哀れだった。

そういう意味でも、ドラマを見た方にとっては、この映画はドラマと映画の違いを楽しむという見方が正しいのかも知れない。

永作博美の演技は、いうまでもなく素晴らしい。
(大好きな女優さんではあるものの、若干心配もしていたんですよね。
普通の母親役ができるのかなぁと・・・しかし、本当にピッタリでした。)

あとは、意外だったのが、
井上真央って、カッコ良いボディしてるんだね・・・
ってことかな・・・
初めて井上真央ちゃんに「女」を感じました。

以上。
映画の感想、というよりも映画とドラマ比較になってしまった。

ちなみに連れはドラマを見ていなかった人だけれども、この映画だけでもラストには感動した、と言ってました。

※余談・「八日目の蝉」と実際の事件について

この作品は、1993年に東京都日野市で起きた「日野OL不倫放火殺人事件」が元ネタだと言われている。

原作者は、全くその事に触れていないらしいけれども、事件の概要を見てみれば一目瞭然…
騒がれないのは、恐らく事件の関係者をそっとしておきたいという配慮からだと私は想像します。

この事件を知ってからこの作品に触れるか、全く知らずに作品を見るか、それは、各人にお任せしたい。

しかし、私自身は、この作品が現実であれば・・・
と、思ってしまった。だって、その方が救われる。

いずれにせよ・・・

男が駄目だってことです。
全ての悲劇は、そこから来ている。
騙される女は・・・業だから仕方ないのである。

「日野OL不倫放火殺人事件」 by Wikipedia

【関連記事】

2010年「八日目の蝉」
2010年4月期NHKドラマ10「八日目の蝉」のレビューページです

ここから下ネタバレ観てない方は観てから読んでね 


この作品について、ドラマ放送時にも言われていたことは、
なぜ赤ちゃんを置いたまま出かけたのか、という。。。

それを「有りえない」という人も多かったけれども、
私は、赤ん坊がよく寝ている時は、数十分くらいの買い物程度ならば
寝かせたまま出かけていたので。。。
何にも批難できないのである。(もちろんカギはかけてたさ )

だって、赤ちゃんを連れて行く、というのは、ほんのちょっとのお出かけだって大変なのである。

どうして、あの時、連れて行かなかったんだろう・・・
と、泣く恵津子の気持ちは、よく解る。
だって、誰も、置いていったら攫われるなんて思わない。
だから置いていくのである。

この作品の中には、そういう「もしも」の後悔がたくさんある。

父は、娘と妻を見るたびに自分の不倫を後悔しただろう。
妻だって、自分が夫の愛人にした仕打ちを後悔しただろう。
愛人は子供を堕ろしたことを後悔しただろう。

追い詰められた精神状態の中で行われた業の報いとして、1人の少女が4年間の空白の時間を求めて旅をする。

少女は、自分には愛された過去がないと思っている。
いや、思っているというよりは無理に忘れているのである。

思い出すことは実母への不実にも繋がるから。

愛されていた記憶
が1人の人間にとって、どれほど大切な物なのか。

この作品は、それを親である私たちに訴える。

人の親になることと、人の親でいることの難しさ。

「八日目の蝉」とは、事件の日から時が止まったまま
置いていかれた全ての人たちを示すもの。

この人たちが、他の蝉が見ることが出来なかった
美しいものを見ることが出来る日が本当に来ればいい。

・八日目の蝉 公式サイト

 



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・象のロケット
★前田有一の超映画批評★

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