『おくりびと』納棺師・旅立ちの門に立つ崇高な儀式

おくりびと

  

監督: 滝田洋二郎
出演:  本木雅弘、山崎努、広末涼子、余貴美子、吉行和子、笹野高史、杉本哲太、橘ゆかり、峰岸徹、宮田早苗、山田辰夫、石田太郎
公開: 2008年9月

モントリオール世界映画祭グランプリ受賞
第81回アカデミー賞 外国語映画賞受賞

「納棺師」という職業を初めて知った。

今までに自分が人生で体験した葬儀は4回。その内2回は、幼くてほとんど記憶にない。残りの2回は父方・母方の祖母の時。父方の時は、葬儀は自宅で行ったが、こんな儀式は記憶にない。

住んでいる地方にも寄る物なのかなぁ。。。

死体は、何となく恐い物だ。
「忌む」とよくいうが、葬儀は「忌み事」「汚らわしい」と言われてしまうのも仕方のない事なのかも。

しかし、この映画を見れば、考えは少し変わるかも知れない。

ご遺体に対する敬意に溢れた納棺師の仕事。

山崎努の、そして本木雅弘の、芸術とも思える鮮やかな、淡々とした手さばきに思わず魅入る。

丁寧に身体をお清めし、鮮やかに、そして敬意をもってお着替えをさせ、色のない肌にお化粧する。

それは、この世に確かに存在していた人を送る最後の儀式。

「汚れ」なんかじゃない。
それは崇高な儀式だ。

送り出す人たちの涙に、見る物も涙を誘われる。

崇高な儀式と、久石譲が手がける美しい音楽。そして、自然の風景。

生と死に、そして、その門出に立つ時間に、静かに浸れる映画である。

映画館でモックン(もう、そう呼んじゃ失礼かなぁ)を見るのは久しぶり。「スパイ・ゾルゲ」以来かも。。。

いくつになっても透明感のある美しさを失わない俳優だと思う。

透明な静かな時間を描く風景には、こういう役者が必要だ。

 

ここから下ネタバレ観てない方は観てから読んでね 

    


泣かせ映画かなぁ。。。と思ったけれども、全然違った。

前半部分はユーモアなシーンも多かったし。。。

お風呂屋のおばちゃんを送り出す事になる事も、自分の父親を送り出すんだろうな、という事も、たぶん父親は石文を持っているんだろうという事も、ストーリー運びから簡単に予想できたけれども予想出来ても、泣けてしまう。

実は、父親が山崎努でした、ってオチかな、と思ったんだけど、そんなベタな映画じゃなかった。

大きな事件が起こるわけでもなく、ただ淡々としたストーリーだったけれども、心に残るシーンは多い。

見て良かったな、と思う。

葬儀に関わる人も大変だなぁ。。。いくら尊厳ある仕事とは言え、最初に出てきたようなご遺体とは、関わりたくないだろうな。

ダンナがもしも、この仕事に転職すると言ったら。。。

「汚らわしい」とは思わないけれども、やっぱり、ちょっとイヤかも。
なにか連れて帰ってきたら恐いもん。。。

・おくりびと 公式HP  www.okuribito.jp/

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comment

  1. くう より:

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    私は何か近年、邦画ばっかりなんですよね~。。。
    確かに、3本に1本の割合で洋画を見ると、
    スケールでかっっと思っちゃう^^;
    この映画も決して劇場で観なくてはならないって
    ほどではないしね。
    でも、風景と音楽は大スクリーンで観る価値はあったかも♪
    >とにかく広末さんの「汚らわしい」という一言に過剰反応してしまいました
    ありゃ、ひどいですよね~。
    私は脳内で「妊娠してイライラしてる」と思って
    片付けておきました^^;

  2. 由香 より:

    SECRET: 0
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    こんばんは~♪
    いや~~~どうやら邦画にイマイチ萌えない体質が、ここのところ発揮されちゃっているようで(笑)、こちらもいい映画だとは思うのですが“普通”だったかなぁ~と思いました。
    とにかく広末さんの「汚らわしい」という一言に過剰反応してしまいました。いつまでも、こだまのように頭に響いて、、、
    人の死を扱うお仕事への偏見を表わすためでも、あれは頂けなかったなぁ~あと、杉本さんの言葉もダメでした・・・
    いい映画なのだとは思いますが、何だか喉に小骨が突き刺さったような感覚がありました。

  3. くう より:

    SECRET: 0
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    私も意外と笑えるシーンがあったのは意外でした。
    笑いもセンスの良い入れ方でしたね。
    >"納棺師"という職業も存知あげませんし、死化粧は身内の女性がやっていたような気がします。
    私もそんな気がします。
    ああ言う儀式は初めて見ましたわ~。
    レスが遅くてごめんなさいね(__)
    今年もよろしくお願いします~♪

  4. sannkeneko より:

    SECRET: 0
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    もっとシリアスだと思っていたので意外と笑えるシーンが多いことは予想外でした。
    しがらみがない(らしい)北海道でも地方によって葬儀はかなり違うのですが、
    "納棺師"という職業も存知あげませんし、死化粧は身内の女性がやっていたような気がします。
    幸い両親は健在ですが、やはり我が身に置き換えて考えさせられる映画でした。
    >ダンナがもしも、この仕事に転職すると言ったら。。。
    "はい、そうですか"とは言い辛いと思いますよ、やっぱり。
    連れて帰ってくるかどうかは別にして(笑)。
    2008年もあと一日。
    どうか良いお年を~♪

  5. くう より:

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    >峰岸さん
    >亡くなられるまえに、無理して何本もご出演なさってたんですね。
    峰岸さんと言い、緒形さんと言い、そのプロ根性と言うか
    お仕事に対する情熱の凄さをひしひしと感じますね。
    >人間誰でもいつかは訪れる死を・・・
    >安らかに・穏やかに迎えられるよう・・・
    >こういう作品も観ておいたほうがいいですね
    そうですね。。。
    なんか、出ていた役者さんが、って考えると余計に
    胸に迫る物がありますね。

  6. ひらりん より:

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    亡くなられるまえに、無理して何本もご出演なさってたんですね。
    人間誰でもいつかは訪れる死を・・・
    安らかに・穏やかに迎えられるよう・・・
    こういう作品も観ておいたほうがいいですね。

  7. くう より:

    SECRET: 0
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    ああいう儀式があったんですね~。
    私は自宅で祖母の葬儀があった時も、中二だったのに
    全く記憶になくて。。。
    翌朝気付いたらお棺に入っていたって感じで、儀式は
    無かったなぁ。。。
    でも、その装束の意味と言うのは、どこかで聞いた
    気がするんですよ。
    う~ん。。。何処だろう。。。
    モックンは、本当にキレイでした~。
    儀式にも、風景にもピッタリはまってたね。

  8. みのむし より:

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    私も祖母と、舅さんを送り出していて、その時に
    やっぱりこういう儀式をやりましたね。
    その時に足袋をはかせるのは、こういう意味です
    とか刃物を乗せるのはこういう意味ですとか
    お金をもたせて三途の川を渡るためです。とか
    そういうことも初めてそれで知りました。
    その時は汚いとは思わなかったですけど、
    みんながみんなきれいな状態とは限りませんもんねぇ。本当に大変な仕事ですね。しかしもっくんは
    ものすごくきれいだったうっとりしてしまいました。

  9. くう より:

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    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    >そうそう、私もそれ思いました。
    いい存在感を放っていてクロサギの山崎さんより
    かなりかっこよくまとめていましたよね。
    あ、やっぱりそう思っちゃいました?(^.^)
    でも、本当の父ではなかったけれども、何か
    父親的な役割があった事は確かですね。
    一緒にご飯食べるシーンとか、そんな繋がりを感じました。
    山崎さんの存在感は、ほんとスゴイ。
    やっぱり、ご遺体は、どうしても違和感感じちゃうものよね。
    私には慣れるって事は出来ない仕事だと思います。
    でも、素晴らしい意味があるお仕事だと思います(^^)

  10. エリ より:

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    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    こんにちは!
    >実は、父親が山崎努でした、ってオチかな、
    と思ったんだけど
    そうそう、私もそれ思いました。
    いい存在感を放っていてクロサギの山崎さんより
    かなりかっこよくまとめていましたよね。
    >なにか連れて帰ってきたら恐いもん
    ここも同じだわ~。
    私なんてもうホント子供よりもひどい恐がりで^^;
    いい映画だと思いながらもゴメンナサイがつきまとって
    いたのが申し訳なかったかもしれません・・。
    でも泣けました。
    泣かせの映画じゃないのにうまい演出でしたわ~。

  11. くう より:

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    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    >昔、祖母が亡くなった時のことを思い出しましたが
    その時にはこんな風に遺体を気遣う清拭ではなかったので
    私の祖母も~。
    とても長生きされたので、割と記憶に新しい葬儀なのですが、
    こういう儀式は一切なかったですね~。
    一度、実際に見てみたい気がします。不謹慎かなぁ。
    >石文のエピソードが良かったです。
    お父さんと自分を繋げる素敵な思い出でしたね。
    人が亡くなるっていうのは、思い出がいっぱい蘇る
    事でもありますね。

  12. くう より:

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    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    >決して泣かせ映画ではなくて、自分の経験にシンクロして自然に泣けちゃうという感じの映画でしたね。
    人と死に別れると言うのは、必ず誰でも体験する
    事ですものね。
    私たちもいつか、送り、そして送られるんだ、と言う
    自然の摂理を無理なく感じられる映画でした。
    >もし夫が納棺師に転職するなんて言ったらちょっと考えちゃうな~とは思いました。
    私も。。。(-_-)
    汚らわしい、とかとは別の何か恐い物を感じてしまいます~。
    慣れれば平気な物かな(^^;)

  13. ミマム より:

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    笑って泣いて、“大変”な映画でした。
    昔、祖母が亡くなった時のことを思い出しましたが
    その時にはこんな風に遺体を気遣う清拭ではなかったので
    地方に寄って、(あるいは時代の流れで)というのは
    きっとあるんでしょうね。
    石文のエピソードが良かったです。

  14. ミチ より:

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    泣かせ映画には敏感に嫌悪感を感じてしまうのだけど、この映画は決して泣かせ映画ではなくて、自分の経験にシンクロして自然に泣けちゃうという感じの映画でしたね。
    納棺師を汚らわしいとは思わないけれど、もし夫が納棺師に転職するなんて言ったらちょっと考えちゃうな~とは思いました。

  15. くう より:

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    >人間の感情を丁寧に映画いて、それが結果として観客の心の琴線に触れるという、そんな作品だったと思います。
    そうですね。
    自然と泣けてしまう映画でした。
    儀式には厳かな物を感じましたし、風景や音楽と共に
    心に残る一本になりましたね。

  16. ノラネコ より:

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    泣けましたけど、泣かせようとはしていないですよね。
    人間の感情を丁寧に映画いて、それが結果として観客の心の琴線に触れるという、そんな作品だったと思います。
    地道にヒットしているようですが、こういう映画は時代を超えて残ると思います。
    正に日本の名画でした。

  17. くう より:

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    >わたしは色々なお葬式には実際経験済みだし。田舎だとじぶん達で、遺体に着物を着せたり、死に化粧もしたことあります。
    色々、地域や宗教・家族でお葬式も違います。
    そうですか~。
    私は、まだ自分が主催の立場になる事はなかったのですが、
    覚悟はしないといけないですよね。
    祖母・祖父の時は、全部葬儀屋さんがやったっていう感じでした。
    >最後の主役の方のお父様の顔がはっきり見えたことが、何よりの供養だと想いました。
    良い映画でしたね^^
    そうですね。
    主役の男性は父親に会いに行って良かったと思います。
    人が亡くなるということは、拘っていた事も消える事ですね。
    父親に対する納棺の義は泣けました。
    ほんと、良い映画でした。

  18. マママゴ より:

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    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    涙涙でした。
    結構若い子も見に来てました。カップルできてたみたいでしたよ。
    わたしは色々なお葬式には実際経験済みだし。田舎だとじぶん達で、遺体に着物を着せたり、死に化粧もしたことあります。
    色々、地域や宗教・家族でお葬式も違います。
    でも見送るのは、生きている人がするですよね?
    最後の主役の方のお父様の顔がはっきり見えたことが、何よりの供養だと想いました。
    良い映画でしたね^^

  19. くう より:

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    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    >私もこの映画で納棺師という仕事を始めて知りました。
    今までの葬儀とかでもお目にかかったことが無いんですよねぇ。。
    霞さんもですか?
    やっぱり地方とかで違うのかなぁ。
    でも、何だかあれを見たら大切な人が亡くなった時、
    心に少しは区切りが着くかなぁ。。。
    私も汚れた仕事だとは思わないけど、ちょっと恐い感じはするかも(>_<)
    ホント、ぼろ泣きでした。
    人が亡くなる儀式は、遺族の身になって見ると、
    悲しいものですよね。

  20. より:

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    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    私もこの映画で納棺師という仕事を始めて知りました。
    今までの葬儀とかでもお目にかかったことが無いんですよねぇ。。
    私も旦那が納棺師をやると言ったらどうだろう?と考えましたが
    少なくとも「汚らわしい」とは思わないかな、と。。
    でも、毎日のようにご遺体に触れるという点では
    ちょっと普通ではない感じはしてしまいますよね。。
    後半、ボロ泣きしましたよぉ~、もう目が腫れて大変(>_<;)
    本当に、見て良かったと思える作品でした (;_;)

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