『キル・ユア・ダーリン』若きアレン・ギンズバーグとルシアン・カー

キル・ユア・ダーリン~ Kill Your Darlings ~

    

監督: ジョン・クロキダス   
出演: ダニエル・ラドクリフ、デイン・デハーン、マイケル・C・ホール、ベン・フォスター、ジャック・ヒューストン、ジェニファー・ジェイソン・リー、エリザベス・オルセン
制作: 2013年(日本未公開)

2014年5月4日。DVD観賞

ビート文学で有名なアメリカの詩人・アレン・ギンズバーグをダニエル・ラドクリフが演じ、1944年、コロンビア大学で実際に起きたデヴィッド・カマラー殺人事件を舞台にしたサスペンス。

1944年、コロンビア大学に合格したアレン・ギンズバーグは、精神の病を抱えた母を気にしつつもニューヨークでの寄宿舎生活に入る。
大学のお堅い文学体制に不満を覚えたアレンは、聖像破壊を目論むルシアン・カーに強く惹かれていく。

正直、前1/3は寝るかと思うほどだった…。けれども後半からビシバシ面白くなっていく。

ルシアン・カーを演じるデイン・デハーンが魔性すぎてもう釘付け。
『クロニクル』の彼も切なかったけれども、こっちはもっと本気で憑りつかれそうなほどだ。ああ、彼になら…そうなるよね、と思える。
   『キル・ユア・ダーリン』若きアレン・ギンズバーグとルシアン・カー

ギャンブル、アルコール、薬物…「依存症」には色々あるけれども、その大元は人間に対する依存である事が多い気がする。親だったり恋人だったり夫だったり。
それが消えてしまった時に、初めてシッカリする…そういう人を間近に見ている。

寂しいんだろう。
人間は誰でも何かに、誰かに、依存して生きているのかも。

堅苦しい大学の正統文学への反発、今まで身近に存在しなかった破天荒な友人たち、酒、たばこ、薬…目まぐるしい変化の中でアレンがルシアンに対して友情以上の物を感じて行ったのはよく解る。

崇拝…そして、独占欲。
しかし、アレンが愛したものは精神不安定な小悪魔だった。
   『キル・ユア・ダーリン』

アレン・ギンズバーグは、こうして同性愛者になりました…というゲイ コトハジメ的ストーリーでもあるけれども、ルシアンは彼の才能を解き放った人物だとも言えるのだろう。

文学の完成には痛々しい恋が必要だから。
  

輪は破壊され、解き放たれて、ルシアンはアレンの中に生き続けているという事か…。

キャストとしてはダニエル・ラドクリフくんがアレン・ギンズバーグにハマっていたとは思えないけれども、まだお上りさんのギンズバーグだからいいのかも。

とりあえず…ビジュアルがハリーなもんだから、大学からの合格通知を読むシーンなんてホグワーツからの招待状か…とかつい思ってしまう。
『キル・ユア・ダーリン』
それだけに、あのシーンは衝撃的だった……。

やはり、デイン・デハーンの美しさと切なさで魅せられる作品だったと思う。
竹宮恵子さまの風木世界を実写で拝めたのはデハーンくんのおかげだ……。

 

ここから下ネタバレ観てない方は観てから読んでね 

    


「人生は「大車輪」だ。
人はその中に閉じ込められて繰り返す。
破壊しないと…。」

好きになっちゃった人がストーカーだと言っていた相手はパトロンで、今も関係はあるのだと知り、キスしてみたら避けられ、やけになって初体験…あげく、殺人事件の尻拭いのために一筆書いてくれと言われ拒否して初めて執着から解き放たれる…と…。

ルシアンは実はゲイではなかったのかも知れないけれども、経緯はともあれ魔性の魅力でデヴィッドを堕として利用していた事も確かで、アレンもまた利用されようとしていた事も確か。

もしかしたら、アレンもルシアンと深みに嵌っていたら、いつかルシアンに色々強要するような事になっていたかも知れない。ルシアンもそれは恐いのだと思う。だから避けた。

ただの友達同志でいられれば良かったのにね。

個人的には、
「息子の守護天使ね」
というルシアンのママが一番怖かったけれども。

たぶん、ルシアンの依存の根本はこの人にあるのだと思った。

自分も夫に捨てられて依存から立ち直れたというアレンの母。

ルシアンを立ち直らせるために、アレンはルシアンを捨てなければならなかった。

依存の輪は断ち切らなければ蔓延する。

愛する者は宇宙へ旅立った。
輪は破壊された。

そうしなければ誰も自由になれなかった。

けれども…デイン・デハーンが演じているからルシアンが可哀想に思えてしまうの。

あ、これって憑りつかれているという事か…ホントの魔性だな。

★前田有一の超映画批評★

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